君の音 2020年08月30日 14年間連れ添った中型の冷蔵庫とお別れする 2006年式、結婚した年に君はうちにきた 奈良でも長崎でも、製菓用の冷蔵庫として ずいぶん長く、苦楽を共にしてきたね 去年あたりから、音がものすごくて、ショートするかもしれないとさえ思った 台所が傾いた古い家だから 足場をまっすぐに立ててみたり さすってみたりした 音は変わらずだったから もう買い替え時なのかなあと言い出…続きを読む
ほんとうに透き通った食べ物 2020年08月28日 先日、波佐見町のFさんから、小麦粉が届いた。 待ちに待った、新米ならぬ、新小麦。 早速、クッキーを焼く。 粉を手に取って、香りをかぐ。 かすかに、やわらかい、甘みのような香り。 そう、Fさんの小麦粉には、こういう優しい香りがある。 出来上がったクッキーを食べた。 味がじんわりと広がって、余韻が、ずーっと鳴り響いている。 その余韻は、ほんとうにかすかで、味とか、臭覚と…続きを読む
その語りは 垣根を こえて 2020年08月27日 8月27日、今日は、朝から隣町、壮瞥町の図書館のおはなしの会の方お二人と、お会いすることになった。 つなげてくださったのは、壮瞥町でカフェを切り盛りする友人。それがまたとーっても素敵なお店。 「素話ができる方に語りのことについていろいろ話が聞けたら」 ということだったので、実際に、短めのお話を一つ語らせていただいた。 有難いことに、自分の語りに、いたく感動していただき、 「子どもたちに…続きを読む
うれしい瞬間 たしかとなった瞬間 2020年08月25日 昨日のレッスンで、とても嬉しい瞬間が生まれた。 冬から初夏の自粛期間で、自身の語りについて、大きな変化があったのだけれど、 それはまだ、自分の中だけにとどまっていて、人に伝え、 外目にそれができた瞬間を感じたわけではなかった。 しかし、今日、その決定的な瞬間を目の当たりにした。 言語造形を学んで、それに沿って語りをやってきたけれど、ぼくはここ一二年の間に、 納得のいかないこと…続きを読む
葉書を拾ってもらう 2020年08月19日 伊達の市役所に行った帰りに、電話がなって。電話を受けると先ほどの役場の方。 「稲尾さんのお名前の葉書が落ちていまして…」 と、わざわざご連絡をいただいた。 知人から残暑見舞いの葉書を頂戴していて、返事を書いたので投函しようと持ち歩いていたのだ。 何かの拍子に落ちてしまったらしく、拾っていただいた。 その葉書にぼくは、 「暑いのに、植物や虫たちは暦を間違えず、ちゃんと生きていて偉い…続きを読む
コオロギ 2020年08月15日 少し前のことになるけれど 8月14日 コオロギが鳴いた 朝の窓辺に ちょうどぼくは 目を出し始めた大根を見ていた コオロギの声は季節の変わりを伝える 記憶をたどると コオロギは 秋の初め 大根の種まきをする頃に聴こえる 桜井に住んでいた頃も 波佐見に住んでいた頃も 9月の上旬 まだまだ暑さの残る畑の草むらに コロコロ… コロコロ… と その…続きを読む
ライアー、その欅の木にまつわる話 2020年08月14日 このところ、ライアーを彫っている。 のみと木槌で。 耳のような形をしているそのライアーの木板は 欅(けやき)の木で出来ている。 良い香りを放っている。 小さい頃から、ぼくは木が好きだった。 いわゆるゲームで遊ばずに 家のそばの林の木で、何かしら作って遊ぶことが多かった。 * もう他界した祖父は 竹細工の職人だった。 工房には、竹と古びた木の匂いがした。 そうした匂いは…続きを読む
友人たちと再会 2020年08月13日 一昨日、一年ぶり、二年ぶりに再会した友人たち。 毎年夏に会うから、親戚の集まりみたいだね、と笑って。 九州は大分からやってきてくれる、友人家族。 そして、二年ぶりに再会した大阪の友人。 念願の、素話を聴かせてもらえた。 ライアーの弾き方も教えてもらった。 そう、宇宙から音を集めるように…なんだね。 スケールが大きいな、ライアー。 なんだか本当に、親戚の集まりみたいだね。 会わな…続きを読む
花と雲の打ち合わせ 2020年08月11日 一週間ほど前、「花と雲」の仲間と次回公演についての打ち合わせを行った。 「花と雲」というのは、ぼくが主宰を務めている、語りの舞台を作るためのグループのことで、 ある意味では、劇団のようなもの。 といっても、基本一人語りであるため、劇団とはすこし違うかもしれない。 一人一人が、取り組みたい作品を持ち寄り、一年に一度ほど公演を行うことにしている。 (昨年が初公演だった) 今、…続きを読む
声、 今年の小麦 2020年08月10日 先日、波佐見町のFさんから電話があった。 Fさんは、波佐見町時代から、いつもお菓子の小麦粉をお願いしていた農家さんだ。 今年は豪雨がひどかったから、小麦の収穫もままならなかったのではと心配していた。 小麦の収穫は、梅雨時期、晴れた日に一日天日に干されたような状態で収穫するという。 かといって、収穫が遅れると、穂が伸びて、それで小麦はダメになってしまうと、最近近所の農家さんに聞いた。 梅…続きを読む
夜明けの木槿 2020年08月07日 夜明けの木槿 夜明けに 木槿(むくげ)の花が咲いていた 今日は一日 大荒れの天気だというが 薄闇の中 降り出した雨に濡れて 風に揺れていた 右に、そして左に 枝の奥から 深く頷くように 何かを思い出すような気配に わたしは立ち止まり しばらく見つめた 木槿は はちす ともいい 一日でしぼむという 夜明けに 木槿の花は不思議な光を放っていた …続きを読む
新しいお話の稽古が始まりました 2020年08月06日 創作童話「お春と秋」が書きあがり、二週間ほど前から稽古が始まりました。 11月頃に語る会ができたらと思っています。 この作品は、日本の昔話「お月とお星」を土台にして、自分のテーマで書いたものです。 民話の中では珍しく、継子話であるのに、悪い継母たちが懲らしめられる話ではなくて、 継母が悔い改め、改心するという内容を含んでいます。 生活が苦しくなると、どんなに良い人であっても、こ…続きを読む
子音のこと 2020年08月04日 8月3日、昨日は久しぶりに来てくださった方の、語り・言語造形の個人レッスン。 二日後に小さな発表を控えているということで、意気込みが違います。 工藤直子さんの作品に取り組み、子音が苦手だということで、子音に重点をおいて。 腕の動き、視点・意識の持ち方、一音一音を指さし触れるように、 または、足で一音一音鳴らしながらの発音。 身体でことばをとらえつつ、そのとらえるものを、息に浸透させ…続きを読む