秋の空の下で

ふと思ったのだ、明るい光の中で幼い我が子とボールを投げて遊ぶとき、 草原の青々とした色と、 秋晴れの空の青さがまぶしてく、いいようのない 歓びとと寂しさとが入り混じっていたことを。 それを名づけようがなくて、 いつまでもいつまでも、確かめるように、ボールを投げ続けていたことを。 きっと、同じものを感じてはいない幼子の歓声と笑顔。 幼いながら、上手に、一生懸命にボールを 取ろうとし…

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授業期間

今日から一週間、演劇の授業に入ります。 初めて受け持つクラスに入るときは、ふだんよりドキドキします。 数日前に台本を受け取り、授業の構成を考えますが、その通りに行くことなんてないのです。 初日の手ごたえで、次の日からどうするのが良いかを考える、そのための指針を見つけるのが初日のように考えています。生徒に質問を投げかけて、その答えから、先を感じてゆく。 対話の中で、熱を見出してゆく、そんな…

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夏、黙すること

夏の暑さの中で、言葉を失ってゆく。 言葉が消えるように溶けてゆくのだ。 同じように、暑さの中で、何かを失いながら熟してゆく感覚もある。 失われる言葉の中で、それらを語るのははばかられるような気がする。 気のせいのような、私一人だけが感じるような、そんな気がすることだから。 だから、そうした「感じ」をそれとなく伝える言葉にハッとする。 「この音楽は夏のような感じがする」 そういうとき…

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コオロギ

朝からコオロギの声がする たしか立秋の 前の日からだった 夕方、第一声が聞こえたとき 鈴の鳴るのを聞くようだった それから また一匹 一匹と 少しずつ増えていった 故郷のコオロギはもう鳴いたのか 覚えている景色は やはり 夕暮れの光の中で 大根の種を降ろしているときだった 暑さに土を忘れるが 土を思い出し 畑の草むらにすわる頃 コオロギが鳴く

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8月9日 こどもたちと

「今日は8月9日。何の日か分かる?」 と、朝、食卓でぼくは訊ねた。 長男の水声は、「あ、原爆の日だ…」とこたえた。 長崎に住んでいた頃は、この日は登校日であるし何の日だかわかりやすい。けれど北海道ではそうした日であることは、感覚として遠くなっていて、とても薄くなっていると感じられる。そうであるのに、中学二年生である水声はよくこたえられたなと思った。 朝食の時間、夏休みであったから…

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木槿 (むくげ)

木槿の花が 朝焼けの空の色に似ていると 気づいたときは嬉しかった 紫とも桃色とも言えない 淡く そして濃い木槿の花びら 移り変わる朝焼けの その一番濃く 深い雲の色を たずさえたような 木槿の花 目を閉じてさえ浮かぶ 夢の残り香を周囲に湛えて  木槿は咲く 真夏の光の中に

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教え子  夏の光の中で

授業の休み時間に 「先生、こんにちは」 と遠くから声をかけてくれた その言葉と身振りに どこか 「お久しぶりです」 という声が聴こえた気がした 二ヵ月前に授業をしたクラスの子だった ほんとうに楽しそうに授業に臨んで はちきれんばかりの歓びにあふれていた そのあとにも声をかけられた はにかみながらの子 フレンドリーな子 暗さや卑下た感じは微塵もなく 光の中…

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モンブラン

先週のこと。 モンブランができました。 お子様が、誕生日にはモンブランが食べたい、ということで バースデーケーキにお作りしました。vegan仕様です。 今まで、モンブランのクリームはゆるくなりすぎたり、材料の問題等あり、納得のいくものができなかったので、やっとできたモンブラン。嬉しい。クリームは三層。カスタード、栗羊羹、マロンクリーム。秋になれば近所で拾った栗でも出来そうです。発送は…

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