
前回のブログの続きのような話になるけれども、
拙詩集「涙の歌」の中、
「この世に存在しないものへの激しい憧憬」によって、
それに貫かれ、突き動かされ書かれた、
内容もそのもの、といえる詩がいくつかある。
その中のひとつ、
「郷里」(きょうり)と題された、詩篇。
もう15年も前、わたしが東京に住んでいたとき、
肺の病で意識を失ったときに、
「ある白い世界」を通った後に見て、感じた世界を、
書いたもの。
(今回は割愛するけれども、
「ある白い世界」も詩として書いてあり、
「白い森」という題名で残してある。
また、「郷里」を一続きの詩として読むことも出来る)
この世界を、描きたい、とずっと思っていて、
それがやっと結晶した詩だった。
この詩が出来たときのことが、忘れられない。
涙をこらえることの出来ない情動のなかで、
ことばとわたし、
それらが一つになりながら、生まれてゆく。
いや、まったく新しい感情、そしてことばが、
自らのうちから、湧きいずるように、
また、それによって、自らが変わっていくように、感じた。
ことばの音律感と意味するところが、
こころの目で見ているもの(体感しているもの)と、一致するような感覚。
その世界に「なる」、という体験の中で、
詩を書いてゆく。
ことばとわたしが、不可分であるところから、
書くことが出来たら、
感情は堰を切って流れ、押さえることができない。
* * * *
郷里
交わされる言葉もなく
会釈もなく
魂がただよっている…
あの人も、この人も、魂だけになって
ただよっている…
あてどもなく…
すると、罪もいわれもない
おだやかな野原へと出るのです
私は夢見ていましたよ
いつもいつも…
きっとあるのだと、夢見ていましたよ…
魂がただよい
うららかな日和、野原では
黄色い蝶々が、舞っている…
ああ 許された
私は 許された…
* * * *
この詩を書いたあとすぐに、親しい友人に読んでもらった。
静かな時間が流れた。
詩を人に手渡すために人に会い、
それが、もっとも大切なことだと思われるから、
手渡さずにはおれなかった。
そのような、ことばを、紡いでゆくこと。
そのように、ことばと、向き合うこと。
それは、わたしの中核にあるもの。
そういえば、
すこしまえに電話があって、
この詩を、4月に大阪でご一緒した、言語造形仲間の
鹿喰さんが、語りたいとおっしゃってくださった。
夏に北海道にいらっしゃるので、
8月12日に、有珠(うす)で言語造形の公演をしましょうという
ことになっていて、
そのときに語られるかどうかは、まだ決定ではないが、
非常に、思い入れのある詩なので、とてもうれしい。
自分の中心部に位置するような、精神の声の詩歌。
それを、自分の声ではなく、他者によって声にされるとき
言語造形によって取り組まれるとき、
どのような響きになるのか、
本当に楽しみだ。
この記事へのコメント
つねさん
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