美呆クッキーのことで

「切りごま」

すこし前のことになるが、誕生日の日に、美呆クッキーを焼いた。
せっかくだから、思い入れのあるクッキーを焼こうと思ったのだ。

美呆クッキー。
それは、とても素朴な味わいで、ぼくは好きなのだけれど、どう考えても、この味は、一般受けしそうにない。だからか、この手の味の焼き菓子を、美呆以外で食べたことがない。

ともすれば、
「味がないよ…?」とか
「おいしくない」とか
「??」
とか、そんなリアクションがあって当然の焼き菓子だ。

そんな、滋味と地味、紙一重の、すれすれ焼き菓子なのだけれど、もうここ数年、どうしたらもっと良くなるのだろうかと、毎回少しずつ、配合や焼き加減を変えてきた。
(微妙な違いなので、よほどの美呆クッキーマニアでないと、その違いは分からないと思います)

そこで、誕生日の日には、今までやったことがないことを思いついた。
美呆クッキーには、粉類の他は、主に、くるみとゴマとアーモンドが入るのだが、
その「煎り白ごま」を入れるときに、「切りごま」にして入れるというものだ。

「切りごま」で通じるだろうか。
このアイデアを思いついたのは、料理をしているときで、「春キャベツの切りごま和え」という惣菜を作った時。ごまを、摺るのではなく、包丁で細かく切るのである。

恥ずかしながら、ごまを包丁で切ったのは初めてである。
すると、キャベツと一緒に食しても、ごまの香りが引き立つのが分かった。
ああ、これはおいしい。

今まで、美呆クッキーに入れる時、すりごまは試してきた。半分量や、三分の一をすりごまにしてみたこともあった。
煎りごまを、さらに煎ったこともあった。
けれども、それほど、差はなかった。
だが、切りごまの香りを嗅いだ時、ピンときた。
これはいいかもしれない。

そう思ったときに、美呆クッキーのごまも、そうしてみようと思いついたのだ。
そうして焼いてみると、
・・・うん、美味しくなっている!




こうして、定番のお菓子というのは、少しずつ、少しずつ、階段を登っていくのだろうなと思います。
老舗の味、というものがあると思います。昔からずっと作り継がれてきた味。
その味を、壊さず、より良くするにはどうしたらよいか、そうした努力が、きっと、こんな感じで続けられているのではないか、そんなことを思いました。

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