新年のご挨拶
謹賀新年
読んでいた詩集から、栞が落ちた。
見ると、大学時代の、図書館の返却の帯だった。
日付は平成10年1月。
昨年はマザーテレサの栞が出てきたが、それよりも古い。
懐かしい大学図書館の空間や匂い、
司書の方の顔を思い出した。
「私たちは、本を良いものだと信じる者の集まりです」
松岡享子さんが、初めて務めたアメリカの図書館の館長が、そういったという。
本を読むことは良いことだ。
その想いが、こころの隅々まで染みわたり、広がること。
そのような読書は、きっと、魂の糧になる。
それは、一文、一文に立ち止まりつつ、書き手の息遣いまでを、察するような読書であることに気づいたのはいつだったか。
古い本の、ことばの中に感じる、格調高さ。
味わい深さ。
それがあるのは、きっと、本がまだ、簡単には作ることができないもので、一字一句の重みが、今とは異なっていたからではないか。
本を読むことは良いことだ。
味わい深く、その中に分け入る読書は、この生にも、分け入らせてくれる心地がする。
そのようなことばを紡いでゆかねばならないとの想いが湧いてくる。
本は語る。
日常では話さないような事柄を。
本は伝える。
人が生きた中で、伝えなくてはおれない、人生の果実を。
読み手は、魂で、その内実を想像して、読む。
果たさなくてはおれない、自分との約束を果たすことを思って。
ぼくも、四十を過ぎ、伝える立場になりました。
先人たちの志を思うようになりました。
まだまだ甘く、ひ弱な自分であるけれども、精進してゆきたい。
遅くなりましたが、本年も、どうぞよろしくお願いいたします。
稲尾教彦
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