めずらしい課題

いよいよ今週末本番を迎える、レアンダー2作品の公演「永遠まで」。
九州に出ていたので、約一か月ぶりの練習となった。

九州でも稽古はしていたが、二人で合わせてみると、一か月ぶりとは思えないほどの、よい仕上がりになった。声も、間も、低く澄んで、揺らがない。
なにより、薫子さんのライアーの響きがぐんと良くなっていた。

「この一か月で、しっかり練習しておきます」
と、薫子さんは言っていたが、ライアーの響きが、ほんとうに素晴らしかった。
遠く、天上の世から聴き取るように、音を迎え、響かせる。

僕の方は、一点だけ、気になる点を残しつつ、次回の練習までの課題とした。
そう、今回の作品では、めずらしいことが課題として残った。

それは、「小さなせむしの少女」という作品のラスト。
最後が、本当に、心を動かされる美しく感動的な場面で、本で読んだときは、そのシーンを読むたびに何度も泣いたものだ。

その感動的な場面があるから、この作品を語りたいと思った理由なのだが、声に出して語るとき、読んだときのような感激を感じることがなくなったのだ。
そして、自分のもとに残るのは、ある、静けさと、ほのかな温かみだけ。
こんなことは、実は今までになかったことだった。

もちろん、語り手は、人前で語るときに、泣いてはならないが、こころの中に秘めやかな涙を感じながら語る。物語を語るとき、一つひとつの出来事を、驚きや清鮮さで迎えつつ、こころを動かすのが、語り手の内的な仕事だから。

この作品の生命ともいえる、この場面を、ぼく自身が、まだ、受けとめ切れていないのか、昇華しきれていないのか、はたまた、まったく違う問題なのか…。

本番までに、そのことを探り、理解に至ったとき、この作品と親しくなれたと感じるのかもしれない。

この記事へのコメント