「りんごローソク」
真っ暗なホールに、らせん状の、モミの木。
中央には、小さな灯一つ。
今年も、この季節が、この日がやってきた。
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始まるまでの10分
小さな灯を見つめながら待つ
無言で
固唾をのんで
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やがて
ホールに入ってきた生徒たちに手渡された
りんごローソク
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らせんの道を歩く
たった一人で
ゆっくりと
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颯爽と歩く人もいれば
神妙に歩く人もいる
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中央の、マザーローソク、
「母なるともしび」
と呼ばれる灯から
一人一人が、灯をもらう
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そして らせんの道を戻る
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消えそうになる火
それを、風をさえぎり、消えないように、
灯を守る
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その姿が、人間の精神を、尊厳を、
大切にしようとしているように見えた。
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また、幼子を抱きかかえているようにも見えた。
この生徒たちが大人になった時の
その守る姿、いつくしむ姿を想った。
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らせんの道には
多くのりんごの火が灯った。
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そのなかに、一つ、消えてしまった
りんごローソクがあった。
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最後、ある人が、消えたローソクに気づき、
そこにしゃがみ、灯をともし、
そして、その隣に、自分のりんごローソクを置いた。
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なんと、美しいことかと思った。
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意識的に手をさしのべた――
ように感じられた。
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これが低学年の子なら、無邪気に
灯をつけてあげることもあるだろう
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しかし、18歳頃ともなれば、
このさしのべる手は、無邪気さではなく、
真心から、誠実さから、
意識的に、さしのべることになる。
そして、その仕草の中に、その背中に、
そうありたい、
というような、願いを感じ取った時、
らせん状の灯が、ほんとうに、灯ったような気がした。
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低く、遠く、歌う声が、
今も、こころにこだましている。
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